古典制御について


はじめに

古典制御と現代制御

周波数領域:古典制御
時間領域:現代制御

蒸気機関の遠心調速器

1788に発明された。
自動制御の考え方が明確に打ち出され、広く普及されるきっかけとなった装置であるといわれている。
記念碑的意義を持つものである。

(古典制御論、吉川恒夫、コロナ社)


制御工学とは

制御とは、ある対象物に何らかの働きかけをして、それを自分の思う通りに動かすことである。

制御の基本構成

自動制御系の最も基本的な構成をブロック線図にしたもの。
               ↓外乱
目標値 -> 制御装置 -操作量-> 制御対象 -制御量 →
      ↑_______________|
閉ループ制御、フィードバック制御と呼ばれる。

対して、制御量の情報を利用しない開ループ制御もある。

外乱の影響を抑制する制御性能の高いが機構が複雑で高価な閉ループ制御と、外乱影響を受けやすく制御性能が低いが機構が単純で安価な開ループ制御。
必要とする制御性能とコストから判断して、いずれかを選択する。

フィードバック制御の注意点として、制御系の出力の振動で不安定な状態に陥る可能性がある。安定性に注意する必要がある。

伝達関数

伝達関数G(s) = Y(s)/U(s)とは、初期条件が全て0という条件の下での入力のラプラス変換U(s)と出力のラプラス変換Y(s)の比である。
(初期条件が全て0にしないと、きれいな式にならない。)

一般的な伝達関数を考える。
システムの特性が次の微分方程式で表される時を考える。
yn + an-1yn-1 + an-2yn-2 + .. + a0y = bmum + bm-1um-1 + .. + b0u
ただし、初期条件がすべて0とする。
ラプラス変換した伝達関数G(s)は、
G(s) = ( bmsm + bm-1sm-1 + .. + b0) / (sn + an-1sn-1 + an-2sn-2 + .. + a0)
で表される。

分母の次数nをシステムの次数という。
分母に対する分子の次数n-mをシステムの相対時数という。

分子多項式をN(s)としたとき、N(s) = 0の根zmをシステムの零点という。
分母多項式をD(s)としたとき、D(s) = 0の根pnをシステムの極という。
なお、D(s)は特性多項式といい、pnを特性根ともいう。


伝達関数の性質

1. 初期値が全て0の下における、任意の入力u(t)に対するシステムの出力y(t)のラプラス変換Y(s)は、伝達関数G(s)とu(t)のラプラス変換U(s)との積G(s)U(s)で与えらえる。
2. 初期値がすべて0である場合に、時刻0における単位インパルス関数δ(t)を入力として与えたときのシステムの出力応答をインパルス応答(impluse response)とよび、g(t)と表す。
伝達関数は、インパルス応答のラプラス変換に等しい。

現在の出力y(t)は、現在までの入力u(τ)(0 ≤ τ ≤t)に対して、インパルス応答関数g(t - τ)でを乗じたものを積分してえられる。
y(t) = intgral([0, t], g(t - τ) u(τ), τ)
各入力に対する影響度合いがインパルス応答で与えられていることから、インパルス応答は荷重関数(weighting function)とも呼ばれる。

インパルス応答は伝達関数との関係が明瞭であり、対象システムの物理特性を時間領域で直接表している。
しかし、インパルス応答を正確に実現するのは難しいので、より実現しやすい単位ステップ入力に対する応答を考えることが多い。この応答をステップ応答(step response)あるいはインディシャル応答(inditial response)という。
ステップ応答は、インパルス応答の積分で与えられる。
インパルス応答は、ステップ応答の微分で与えらえる。



制御の要素と伝達関数

1次遅れ要素

入力u(t)と出力y(t)の関係が次の微分方程式で表される制御系の要素を1次遅れ要素 (first order time lag element, 1次遅れ系) という。
Ty'(t) + y(t) = Ku(t)
ただし、Tはゲイン定数 (gain constant)、Kは時定数(time constant)と呼ばれる。
電気系、熱系、液位系における1次遅れ要素はいくつも例があるが、機械系では二階微分関係するので通常1次遅れでは表現できない。

ラプラス変換すると
(Ts + 1)Y(s) = KU(s)
→ G(s) = Y/U = K / (Ts+1)

よって、インパルス応答g(t)は、
g(t) = ラプラス逆変換(G(s)) = K/T * exp(-t/T)
他方、ステップ応答ys(t)は 、
ys(t) = ラプラス逆変換(G(s) * 1/s) = K (1 - exp(-t/T))

ステップ応答において、t → ∞野ときの定常出力はKとなる。
時刻0における応答曲線の接線が、定常出力Kの値に達する時間が、時定数Tとなる。

t = Tにおける値は、
ys(T) = K (1 - exp(-T/T)) ≅ 0.632 K
約63.2 %まで脱する。


積分要素

下記式で表されるような制御系の要素を積分要素という。
y'(t) = Ku(t)
ただし、Kは定数である。
入力の積分値が出力として得られる。

伝達関数は、次式で与えられる。
G(s) = K/s

積分要素K/sの
インパルス応答はg(t) = Kus(t)
ステップ応答はys(t) = Kt

2次遅れ要素

次式で表されるようなシステムを2次遅れ要素(second order time lag element)という。
y''(t) + a1y'(t) + a0y(t) = b0u(t)
ただし、a0, a1 ≥ 0、b0 > 0とする。(← これをみたさないときは? これを満たさないものは2次遅れ要素ではない?)

なお、伝達関数を得るためには、入力を0としたときのyの平衡点でシステムの特性を表現することが必要である。

2次遅れ要素の伝伝達関数は、次式で表現できる。
G(s) = b0 / (s2 + a1s + a0)

インパルス応答とステップ応答を考える。

a0 > 0の場合、
G(s) = Kωn2 / (s2 + 2ζωns + ωn2)
ただし、
ωn = sqr(a0)
ζ = a1 / 2ωn = a1 / 2sqr(a0)
K = b0 / ωn2 = b0 / a0
とする。


G(s)の分母の根は、
p = -ωn (ζ ∓ sqr(ζ2 - 1))
である。

0 ≤ ζ < 1のとき、共役複素数
ζ = 1のとき、重根
ζ > 1のとき、異なる2実根
をもつ。

〇 0 ≤ ζ < 1のとき
インパルス応答は、振動的挙動を示す。
振幅は時間経過とともに減衰していく。
減衰度はζが大きくなるにつれて早く減衰するようになる。このため、ζは減衰係数 (damping coefficient)と呼ばれる。
減衰がないとき(ζ = 0)の振動の角周波数は、ωnで与えられる。これを自然角周波数 (natural angular frequency)と呼ばれる。
減衰係数がζのときの振動の角周波数は、ωn sqr(1 - ζ2)で与えらえる。これは減衰振動の角周波数と呼ばれる。

ωnが大きくなるにつれ、応答が早くなる (← 定常までが早くなるってことだと思う)

〇 ζ ≥ 1のとき
振動しない。

減衰係数が0 < ζ < 1のときにインパルス応答やステップ応答が振動的になる点が、1次遅れ要素の応答と大きく異なる点である。

零点あり2次要素

次式で表されるようなシステムを零点あり2次要素(second order element with a zero, 零点あり2次系)という。
y''(t) + a1y'(t) + a0y(t) = b1u'(t) + b0u(t)
ただし、
a1, a0, b0, ≥ 0
b1 > 0
とする。

伝達関数は
G(s) = (b1s + b0) / (s2 + a1s + a0)
と表される。零点とは、根のこと。根があるので零点あり2次要素。


a0 = 0のときは2次要素遅れと同じにできる。
以下はa0 > 0のときを考える。
G(s) = K(ξωns + ωn2) / (s2 + 2ζωns+ ωn2)

ωn = sqr(a0)
ζ = a1 / 2 sqr(a0)
K = b0 / b1
ξ = b1 sqr(a0) / b0

ξ (クサイ)

対応する2次遅れ要素として以下を定義する。
GD(s) = Kωn2 / (s2 + 2ζωns + ωn2)

すると、
G(s) = K(ξωns + ωn2) / (s2 + 2ζωns+ ωn2)
= Kξωns / (s2 + 2ζωns+ ωn2) + Kωn2 / (s2 + 2ζωns+ ωn2)
= ξ/ωn GD(s) s + GD(s)
となる。
これのインパルス応答(GD(s)の逆ラプラス変換)は、GD(s)のインパルス応答gD(t)を、その時間微分g'D(t)で修正した形になる。
GD(s)が同じでも、零点の位置z = -ωn/ξによって大きく異なる。(ただし、0 < ζ < 1のとき)
ステップ応答も同様に大きく異なる。(ただし、0 < ζ < 1のとき)

特に、零点が正になると、初期の応答が定常出力とは逆の方向に出る現象 (逆応答)が生じる。
実部が正の零点を持つシステムの特徴である。

比例要素

y(t) = K u(t)
で表されるシステムを比例要素と呼ぶ。
システムの次数が0なので0次系である。

伝達関数
G(s) = K

インパルス応答
g(t) = K δ(t)

ステップ応答
ys(t) = K us(t)

ばね要素は微分要素。

微分要素

y(t) = K u'(t)
で表されるシステムを微分要素と呼ぶ。
発電機は角度を入力とし、電圧を出力とする微分要素。

伝達関数
G(s) = K s

インパルス応答
g(t) = K δ'(t)

ステップ応答
ys(t) = K δ(t)

一般にm > nのとき、現実の装置で厳密に実現するのは難しいとされる。
微分要素を使用したい場合には、伝達関数が
G(s) = K s / (1 + γ K s)
で表され、かつγを小さな正の値の取れる要素を近似的に用いることになる。
この要素を近似微分要素と呼ぶ。

無駄時間要素

y(t) = u(t-T)
で表されるシステムを無駄時間要素 (time delay element, 時間遅れ要素)と呼ぶ。
u(t) = 0 (t < 0)、T ≥ 0

u(t-T) = u(t-T) us(t-T)の伝達関数は、
G(s) = e-Ts

ベルトコンベアにu(t)のせて、y(t)でてくる。みたいな。

むだ時間要素は有限次元の線形微分方程式では表現できず、数学的には無限次元の変数で表示しなければならないシステム(分布定数システム)である。解析・設計を簡単にするために、有限次元システムによる近似を用いることがある。
G(s) ≅ (1 - Ts / 2) / (1 + Ts / 2)
G(s) ≅ (1 - Ts / 2 + Ts2 / 12) / (1 + Ts / 2 + (Ts2)2 / 12)
これらは、パデー近似(Pade approximation)と呼ばれる一連の近似法の1次、2次近似。



微分要素は物理的実現性や解析の困難さがある。
むだ時間要素は解析の困難さを持つ。

物理量や物理要素の間に明確な類似関係がある。
機械系 (直動):力 f [N] 速度 v [m/s]  変位 x [m] ばね定数 K [N/m] 粘性摩擦係数 D [Ns/m] 質量 M [kg]
機械系 (回転):トルク τ [Nm] 角速度 [rad/s] 角変位 θ [rad] ばね定数 K [Nm/rad] 粘性摩擦係数 D [Nm/rad] 慣性モーメント J [kg m2]
電気系: 電圧 v [V] 電流 i [A] 電荷q [C] 1/静電容量C [F] 抵抗 R [Ω] インダクタンス L [H]
液位系: 液位 h [m] 流量 q [m3/s] 液量 v [m] 1/液面談面積 A [m3] 流路抵抗 R [Ω] -
熱系: 温度 θ [°C] 熱流量 q [J/s] 熱量 Q [J] 1/熱容量 [J/°C] 熱抵抗 R [°Cs/J] -


高次系の特性

入力から出力までの伝達関数はかなり工事になる場合が多い。
通常我々が扱うシステムにおいては、伝達関数の分子多項式N(s)の次数mが分母多項式D(s)の次数nに等しいかそれより小さい。
m ≤ nのとき、伝達関数はプロパー (proper)といい、m < nのとき、厳密にプロパー (strictly proper)という。

〇 上述した要素の分類
厳密にプロパー
1次遅れ要素 K/(Ts + 1)
積分要素 K/s
2次遅れ要素 Kωn2 / (s2 + 2ζωns+ ωn2)
零点あり2次要素 K(ξωns + ωn2) / (s2 + 2ζωns+ ωn2)

プロパー
比例要素 K
近似微分要素 Ks / (1 + γKs)

プロパーでない
微分要素 Ks

プロパー性議論の対象外
むだ時間要素 exp(-Ts)

プロパーな伝達関数を持つシステムは、
1次遅れ要素積分要素、2次遅れ要素、零点あり2次要素、比例要素の和と積で表される。

〇 プロパー性の物理的意味
厳密にプロパーな伝達関数を持つシステム:y(t)を出すために入力{u(τ), τ < t}が得られれば良い。
入出力間の因果関係が時間順序と整合していて、実世界で実現可能。
プロパーな(しかし厳密にプロパーでない)伝達関数を持つシステム:y(t)を出すために入力{u(τ), τ ≤ t}が必要。
原因と結果に同時性が求められる。実用的には十分正確に実現可能。
プロパーでない伝達関数を持つシステム:実世界では実現できない。入力のためには未来の情報が必要になってしまう。