はじめに
古典制御と現代制御
周波数領域:古典制御
時間領域:現代制御
蒸気機関の遠心調速器
1788に発明された。
自動制御の考え方が明確に打ち出され、広く普及されるきっかけとなった装置であるといわれている。
記念碑的意義を持つものである。
(古典制御論、吉川恒夫、コロナ社)
制御工学とは
制御とは、ある対象物に何らかの働きかけをして、それを自分の思う通りに動かすことである。
制御の基本構成
自動制御系の最も基本的な構成をブロック線図にしたもの。
↓外乱
目標値 -> 制御装置 -操作量-> 制御対象 -制御量 →
↑_______________|
閉ループ制御、フィードバック制御と呼ばれる。
対して、制御量の情報を利用しない開ループ制御もある。
外乱の影響を抑制する制御性能の高いが機構が複雑で高価な閉ループ制御と、外乱影響を受けやすく制御性能が低いが機構が単純で安価な開ループ制御。
必要とする制御性能とコストから判断して、いずれかを選択する。
フィードバック制御の注意点として、制御系の出力の振動で不安定な状態に陥る可能性がある。安定性に注意する必要がある。
ラグランジュ法 (機械系の数学モデルの導出)
多関節ロボット等の複雑な構造の機械系であるときは、微分方程式の導出は困難である。このような場合ラグランジュ法が利用されることが多い。
運動方程式 W(t)
位置エネルギー V(t)
散逸エネルギー D(t):ダンパもしくは粘性摩擦による散逸エネルギー
ラグラジアン L(t) = W(t)-V(t)
一般化座標 q(t) = transpose([q1(t) ... qp(t)])
一般化力 u(t) = transpose([ u1(t) ... up(t)])
d/dt{ ∂L(t) / ∂ dot(q(t))} - ∂L(t) / ∂qi(t) + ∂D(t) / ∂ dot(qi(t))} = ui(t)
伝達関数
伝達関数G(s) = Y(s)/U(s)とは、初期条件が全て0という条件の下での入力のラプラス変換U(s)と出力のラプラス変換Y(s)の比である。
(初期条件が全て0にしないと、きれいな式にならない。)
一般的な伝達関数を考える。
システムの特性が次の微分方程式で表される時を考える。
yn + an-1yn-1 + an-2yn-2 + .. + a0y = bmum + bm-1um-1 + .. + b0u
ただし、初期条件がすべて0とする。
ラプラス変換した伝達関数G(s)は、
G(s) = ( bmsm + bm-1sm-1 + .. + b0) / (sn + an-1sn-1 + an-2sn-2 + .. + a0)
で表される。
分母の次数nをシステムの次数という。
分母に対する分子の次数n-mをシステムの相対時数という。
分子多項式をN(s)としたとき、N(s) = 0の根zmをシステムの零点という。
分母多項式をD(s)としたとき、D(s) = 0の根pnをシステムの極という。
なお、D(s)は特性多項式といい、pnを特性根ともいう。
伝達関数の性質
1. 初期値が全て0の下における、任意の入力u(t)に対するシステムの出力y(t)のラプラス変換Y(s)は、伝達関数G(s)とu(t)のラプラス変換U(s)との積G(s)U(s)で与えらえる。
2. 初期値がすべて0である場合に、時刻0における単位インパルス関数δ(t)を入力として与えたときのシステムの出力応答をインパルス応答(impluse response)とよび、g(t)と表す。
伝達関数は、インパルス応答のラプラス変換に等しい。
現在の出力y(t)は、現在までの入力u(τ)(0 ≤ τ ≤t)に対して、インパルス応答関数g(t - τ)でを乗じたものを積分してえられる。
y(t) = intgral([0, t], g(t - τ) u(τ), τ)
各入力に対する影響度合いがインパルス応答で与えられていることから、インパルス応答は荷重関数(weighting function)とも呼ばれる。
インパルス応答は伝達関数との関係が明瞭であり、対象システムの物理特性を時間領域で直接表している。
しかし、インパルス応答を正確に実現するのは難しいので、より実現しやすい単位ステップ入力に対する応答を考えることが多い。この応答をステップ応答(step response)あるいはインディシャル応答(inditial response)という。
ステップ応答は、インパルス応答の積分で与えられる。
インパルス応答は、ステップ応答の微分で与えらえる。
制御の要素と伝達関数
1次遅れ要素
入力u(t)と出力y(t)の関係が次の微分方程式で表される制御系の要素を1次遅れ要素 (first order time lag element, 1次遅れ系) という。
Ty'(t) + y(t) = Ku(t)
ただし、Tはゲイン定数 (gain constant)、Kは時定数(time constant)と呼ばれる。
電気系、熱系、液位系における1次遅れ要素はいくつも例があるが、機械系では二階微分関係するので通常1次遅れでは表現できない。
ラプラス変換すると
(Ts + 1)Y(s) = KU(s)
→ G(s) = Y/U = K / (Ts+1)
よって、インパルス応答g(t)は、
g(t) = ラプラス逆変換(G(s)) = K/T * exp(-t/T)
他方、ステップ応答ys(t)は 、
ys(t) = ラプラス逆変換(G(s) * 1/s) = K (1 - exp(-t/T))
ステップ応答において、t → ∞野ときの定常出力はKとなる。
時刻0における応答曲線の接線が、定常出力Kの値に達する時間が、時定数Tとなる。
t = Tにおける値は、
ys(T) = K (1 - exp(-T/T)) ≅ 0.632 K
約63.2 %まで脱する。
積分要素
下記式で表されるような制御系の要素を積分要素という。
y'(t) = Ku(t)
ただし、Kは定数である。
入力の積分値が出力として得られる。
伝達関数は、次式で与えられる。
G(s) = K/s
積分要素K/sの
インパルス応答はg(t) = Kus(t)
ステップ応答はys(t) = Kt
2次遅れ要素
次式で表されるようなシステムを2次遅れ要素(second order time lag element)という。
y''(t) + a1y'(t) + a0y(t) = b0u(t)
ただし、a0, a1 ≥ 0、b0 > 0とする。(← これをみたさないときは? これを満たさないものは2次遅れ要素ではない?)
なお、伝達関数を得るためには、入力を0としたときのyの平衡点でシステムの特性を表現することが必要である。
2次遅れ要素の伝伝達関数は、次式で表現できる。
G(s) = b0 / (s2 + a1s + a0)
インパルス応答とステップ応答を考える。
a0 > 0の場合、
G(s) = Kωn2 / (s2 + 2ζωns + ωn2)
ただし、
ωn = sqr(a0)
ζ = a1 / 2ωn = a1 / 2sqr(a0)
K = b0 / ωn2 = b0 / a0
とする。
G(s)の分母の根は、
p = -ωn (ζ ∓ sqr(ζ2 - 1))
である。
0 ≤ ζ < 1のとき、共役複素数
ζ = 1のとき、重根
ζ > 1のとき、異なる2実根
をもつ。
〇 0 ≤ ζ < 1のとき
インパルス応答は、振動的挙動を示す。
振幅は時間経過とともに減衰していく。
減衰度はζが大きくなるにつれて早く減衰するようになる。このため、ζは減衰係数 (damping coefficient)と呼ばれる。
減衰がないとき(ζ = 0)の振動の角周波数は、ωnで与えられる。これを自然角周波数 (natural angular frequency)と呼ばれる。
減衰係数がζのときの振動の角周波数は、ωn sqr(1 - ζ2)で与えらえる。これは減衰振動の角周波数と呼ばれる。
ωnが大きくなるにつれ、応答が早くなる (← 定常までが早くなるってことだと思う)
〇 ζ ≥ 1のとき
振動しない。
減衰係数が0 < ζ < 1のときにインパルス応答やステップ応答が振動的になる点が、1次遅れ要素の応答と大きく異なる点である。
零点あり2次要素
次式で表されるようなシステムを零点あり2次要素(second order element with a zero, 零点あり2次系)という。
y''(t) + a1y'(t) + a0y(t) = b1u'(t) + b0u(t)
ただし、
a1, a0, b0, ≥ 0
b1 > 0
とする。
伝達関数は
G(s) = (b1s + b0) / (s2 + a1s + a0)
と表される。零点とは、根のこと。根があるので零点あり2次要素。
a0 = 0のときは2次要素遅れと同じにできる。
以下はa0 > 0のときを考える。
G(s) = K(ξωns + ωn2) / (s2 + 2ζωns+ ωn2)
ωn = sqr(a0)
ζ = a1 / 2 sqr(a0)
K = b0 / b1
ξ = b1 sqr(a0) / b0
ξ (クサイ)
対応する2次遅れ要素として以下を定義する。
GD(s) = Kωn2 / (s2 + 2ζωns + ωn2)
すると、
G(s) = K(ξωns + ωn2) / (s2 + 2ζωns+ ωn2)
= Kξωns / (s2 + 2ζωns+ ωn2) + Kωn2 / (s2 + 2ζωns+ ωn2)
= ξ/ωn GD(s) s + GD(s)
となる。
これのインパルス応答(GD(s)の逆ラプラス変換)は、GD(s)のインパルス応答gD(t)を、その時間微分g'D(t)で修正した形になる。
GD(s)が同じでも、零点の位置z = -ωn/ξによって大きく異なる。(ただし、0 < ζ < 1のとき)
ステップ応答も同様に大きく異なる。(ただし、0 < ζ < 1のとき)
特に、零点が正になると、初期の応答が定常出力とは逆の方向に出る現象 (逆応答)が生じる。
実部が正の零点を持つシステムの特徴である。
比例要素
y(t) = K u(t)
で表されるシステムを比例要素と呼ぶ。
システムの次数が0なので0次系である。
伝達関数
G(s) = K
インパルス応答
g(t) = K δ(t)
ステップ応答
ys(t) = K us(t)
ばね要素は微分要素。
微分要素
y(t) = K u'(t)
で表されるシステムを微分要素と呼ぶ。
発電機は角度を入力とし、電圧を出力とする微分要素。
伝達関数
G(s) = K s
インパルス応答
g(t) = K δ'(t)
ステップ応答
ys(t) = K δ(t)
一般にm > nのとき、現実の装置で厳密に実現するのは難しいとされる。
微分要素を使用したい場合には、伝達関数が
G(s) = K s / (1 + γ K s)
で表され、かつγを小さな正の値の取れる要素を近似的に用いることになる。
この要素を近似微分要素と呼ぶ。
無駄時間要素
y(t) = u(t-T)
で表されるシステムを無駄時間要素 (time delay element, 時間遅れ要素)と呼ぶ。
u(t) = 0 (t < 0)、T ≥ 0
u(t-T) = u(t-T) us(t-T)の伝達関数は、
G(s) = e-Ts
ベルトコンベアにu(t)のせて、y(t)でてくる。みたいな。
むだ時間要素は有限次元の線形微分方程式では表現できず、数学的には無限次元の変数で表示しなければならないシステム(分布定数システム)である。解析・設計を簡単にするために、有限次元システムによる近似を用いることがある。
G(s) ≅ (1 - Ts / 2) / (1 + Ts / 2)
G(s) ≅ (1 - Ts / 2 + Ts2 / 12) / (1 + Ts / 2 + (Ts2)2 / 12)
これらは、パデー近似(Pade approximation)と呼ばれる一連の近似法の1次、2次近似。
微分要素は物理的実現性や解析の困難さがある。
むだ時間要素は解析の困難さを持つ。
物理量や物理要素の間に明確な類似関係がある。
機械系 (直動):力 f [N] 速度 v [m/s] 変位 x [m] ばね定数 K [N/m] 粘性摩擦係数 D [Ns/m] 質量 M [kg]
機械系 (回転):トルク τ [Nm] 角速度 [rad/s] 角変位 θ [rad] ばね定数 K [Nm/rad] 粘性摩擦係数 D [Nm/rad] 慣性モーメント J [kg m2]
電気系: 電圧 v [V] 電流 i [A] 電荷q [C] 1/静電容量C [F] 抵抗 R [Ω] インダクタンス L [H]
液位系: 液位 h [m] 流量 q [m3/s] 液量 v [m] 1/液面談面積 A [m3] 流路抵抗 R [Ω] -
熱系: 温度 θ [°C] 熱流量 q [J/s] 熱量 Q [J] 1/熱容量 [J/°C] 熱抵抗 R [°Cs/J] -
高次系の特性
入力から出力までの伝達関数はかなり高次元になる場合が多い。
通常我々が扱うシステムにおいては、伝達関数の分子多項式N(s)の次数mが分母多項式D(s)の次数nに等しいかそれより小さい。
m ≤ nのとき、伝達関数はプロパー (proper)といい、m < nのとき、厳密にプロパー (strictly proper)という。
〇 上述した要素の分類
厳密にプロパー
1次遅れ要素 K/(Ts + 1)
積分要素 K/s
2次遅れ要素 Kωn2 / (s2 + 2ζωns+ ωn2)
零点あり2次要素 K(ξωns + ωn2) / (s2 + 2ζωns+ ωn2)
プロパー
比例要素 K
近似微分要素 Ks / (1 + γKs)
プロパーでない
微分要素 Ks
プロパー性議論の対象外
むだ時間要素 exp(-Ts)
プロパーな伝達関数を持つシステムは、
1次遅れ要素積分要素、2次遅れ要素、零点あり2次要素、比例要素の和と積で表される。
〇 プロパー性の物理的意味
厳密にプロパーな伝達関数を持つシステム:y(t)を出すために入力{u(τ), τ < t}が得られれば良い。
入出力間の因果関係が時間順序と整合していて、実世界で実現可能。
プロパーな(しかし厳密にプロパーでない)伝達関数を持つシステム:y(t)を出すために入力{u(τ), τ ≤ t}が必要。
原因と結果に同時性が求められる。実用的には十分正確に実現可能。
プロパーでない伝達関数を持つシステム:実世界では実現できない。入力のためには未来の情報が必要になってしまう。
システムの安定性と過渡特性
安定性と定常特性
定常特性:十分に時間が経過した後のシステムの特性のこと。
時間応答y(t)がある値に収束するのであれば、最終値の定理(次式)より算出できる。
y∞ = lim[t → ∞] y(t) = lim[s → ∞] s*y(s)
極と安定性
伝達関数P(s)の極(分母多項式の根)の実部(実数の根と、複素数の根の実部)が全て負であれば、t → ∞のとき、y(t) → A0に収束する。
このとき、システムは安定であるという。
しかし、いずれかが正であればy(t)は発散し、システムは不安定という。
実部が負である極を安定極という。
実部が正である極を不安定極という。
安定性に関する条件:
(有界入力有界出力)安定性の必要十分条件
伝達関数の極の実部が全て負であれば、その時に限りシステムは安定であり、ステップ応答y(t)はある値に収束する。
このとき、どのような有界な入力u(t)を加えても出力y(t)は発散することなく、有界となる。
※ 有界:あるM > 0に対して、信号f(t)が|f(t)| ≤ Mを満足するとき、f(t)が有界であるという。
単位ステップ応答の定常値
単位ステップ応答の場合、時間応答の計算をすることなく、最終値の定理から定常値を求めることができる。
y∞ = P(0)
フルビッツの安定判別法
システムの安定性を判別するには、伝達関数の分母多項式の根の実部がすべて負であるかを判別すればよい。
しかし、n ≥ 3のとき、根を解析的に求めることは困難である。(3次:カルダノの公式、4次:フェラーリの公式があるがその手順は複雑。5次以上は解の公式がないことがアーベルにより証明されている。)
条件A: Dp(s)のすべての係数aiが正 (必要条件)
条件B: フルビッツ行列 H1, H2, ..., Hnがすべて正(十分条件)
条件Bは冗長なので、
条件B': H2, H3, ..., Hn-1 だけでよい。
さらに、an > 0であれば、
条件B'':
(nが偶数のとき) H3, H5, ..., Hn-1 がすべて正
(nが奇数のとき) H2, H4, ..., Hn-1 がすべて正
N = length(denP);
n = N - 1;
alpha = flip(denP);
if denP(1) < 0
alpha = - alpha;
end
if alpha > 0
for i = 1:n
for j = 1:n
k = (N - 1) + (i - 1) - 2*(j - 1);
if k >= 1 & k <= N
H(i,j) = alpha(k);
else
H(i,j) = 0;
end
end
end
if mod(n,2) == 0
i_min = 3; i_max = n - 1;
else
i_min = 2; i_max = n - 1;
end
flag = 0;
for i = i_min:2:i_max
h = det(H(1:i,1:i));
str = ['H', num2str(i), '= h'];
eval(str)
if h <= 0
flag = 1;
end
end
if flag == 0
fprintf(' 安定である\n');
else
fprintf(' 安定ではない');
fprintf(' ---> 条件 A を満足するが,条件 B" を満足しない\n');
end
else
fprintf(' 安定ではない');
fprintf(' ---> 条件 A を満足しない\n');
end
単位ステップ応答の過渡特性の指標
時間応答が落ち着くまでのシステムの特性を過渡特性という。
ステップ応答の過渡特性の指標
立上がり時間 Tr:単位ステップ応答y(t)が定常値の10 %から90 %(あるいは5 %から95 %)に至るまでの時間。
遅れ時間 Td:単位ステップ応答y(t)が定常値の50 %に至るまでの時間。
整定時間 Ts:単位ステップ応答y(t)が定常値の±ε % (5, 2, 1を選ぶ時が多い)に収まるまでの時間。
行き過ぎ時間 Td:定常値からの単位ステップ応答y(t)の行き過ぎ量が最大となる時間。
オーバーシュート Amax:単位ステップ応答y(t)の最大ピーク値と定常値との差。百分率で表すことも多い。
振動周期 T :隣り合うピークの時間間隔。
減衰率 λ:振幅k+1/振幅k。対数で表すこともある。
時間応答の反応の速さを表す速応性と、振動の激しさを表す安定度に大別される。
極・零点と過渡極性
極と過渡特性
極が複素数α ± jβである不足制動(後述)の2次遅れ系の、極と単位ステップ応答の関係を考える。
P(s) = (α2 + β2) / ((s - α)2 + β2)
y(s) = P(s)u(s)
y(t) ...
y'(t) ...
α < 0であれば安定(収束)、α > 0であれば不安定(発散)、α = 0であれば安定限界(持続振動)。
αが負側に大きくなると、収束が速くなる。
βが大きくなると、振動周期が短くなる。
フルビッツの判別式からも、同じことを導出できる。
代表極
虚軸に近い極のモードが時間応答で支配的になる。
虚軸に最も近い極を代表極という。
システムの時間応答はこの代表極のみを考慮した時間応答で近似することができる。
零点と過渡極性
システムの伝達関数が零点を持つ場合、過渡特性に大きく影響を与えることがある。
零点をzとする。
ステップ応答の時間微分から、応答が不安定になるかがわかる。
実部0となる零点を含むとき、一旦逆ブレを生じ極小値を経てから極限値へ収束する。
零点が極に近づくと、それらの組を約分した伝達関数を持つシステムの応答に漸近する。
接近した極と零点の組をダイポールという。
零点を持つシステムとして、倒立振子が知られている。
倒立させたままアーム追従させるには、一旦アームを負方向に逆ブレさせてから目標値に向けて正回転させる必要がある。
1次遅れ系2次遅れ系時間応答
1次遅れ系時間応答
標準系:
P(s) = K / (1 + Ts) (T > 0)
単位ステップ応答を考える。
単位ステップ入力u(s)を乗じればいい。y(s) = P(s) u(s)
y(s) = P(s) u(s) = P(s) 1/s
= K / s(1+Ks) = K { 1/s - 1/(s+1/T) }
これを逆ラプラス変換して、
y(t) = K (1 - exp(-1/T t)) (t ≥ 0)
と選られる。
T > 0において、exp部分は単調減少で0に収束するので、単位ステップ応答は振動せずに定常値Kへ収束する。
1次遅れ系の特徴は、以下のパラメタで表現できる:
時定数T (> 0):速応性に関するパラメタ
ゲインK (!= 0):定常値に関するパラメタ
時定数Tの意味
t = Tのとき、y(T) = K (1 - exp(-1)) = K * 0.632..
より、ステップ応答の定常値の約63.2%に至る時間である。
ステップ応答を時間微分してみる。
y'(t) = K/T exp(-1/T t) (t ≥ 0)
y'(0) = K/T
より、t = Tで定常値まで到達する線の傾きが、t = 0における傾きである。
→ 時定数が2倍になると、反応が1/2倍になる。
2遅れ系時間応答
y(s) = P(s) u(s)
P(s) = Kωn2 / (s2 + 2 ζ ωn s + 2ωn2)
特徴づけるパラメタ:
減衰係数 ζ (> 0):安定度
固有角振動数 ωn (> 0):速応性
ゲイン K (!= 0):定常値
極(分母多項式の根)は、
s = - (ζ ± sqrt(ζ2 - 1) ) ωn
である。次のように分類される。
|ζ| < 1:極は共役複素数
ζ = ±1:極は重解の実数
|ζ| > 1:極は異なる実数
一方、安定性については、上述したとおり「極の実部が負であれば安定」である。
よって、
ζ > 0:実部が負の共役複素数 or 負の実数なので安定。
ζ = 0:実部が0の虚数なので安定限界。
ζ < 0:実部が正の共役複素数 or 正の実数なので不安定。
といえる。
さらにシステムが安定となるζ > 0の範囲で次のように分類できる。
不足制動 (0 < ζ < 1):極は実部が負の共役複素数。入力の振動が徐々に小さくなりながら定常値へ収束する。
臨海制動 (ζ = 1):極は負の実数 (重解)。入力の振動がなく、定常値への収束は遅くない。
過制動 (ζ > 1):極委は互いに異なる負の実数。定常値への収束が遅い。
不足制動 (0 < ζ < 1)
2次遅れ系の中で最も重要。
0 < ζ < 1のとき、ωd = ωn sqrt(1-ζ2)とすると、
2に遅れ要素P(s)の極は
s = - (ζωn ± jωd)
であり、このとき、
s2 + 2 ζ ωn s + 2ωn2 = (s + ζωn)2 + ωd2
であるから、単位ステップ応答のラプラス変換は、
y(s) = P(s) 1/s = ...
と求まる。
したがって、
y(t) = K * { 1 - exp( -ζωnt ) * ( cos(ωdt) + (1 / sqrt(1-ζ2) sin ωdt ) }
となる。これより、y(t)は定常値y∞ = Kに収束する。
これは、収束値の定理より、y∞ = y(0) = Kと一致する。
〇 以下の値も導出できる。
・行き過ぎ時間 Tp、オーバーシュート Amax
・ 振動周期 T、減衰率 λ
〇 過渡特性
一定周期Tで振動しながら定常値y∞ = Kに収束する。
行き過ぎ時間Tpや振動周期Tは固有角周波数ωnに反比例する。つまり、ωnをN倍すると、反応がN倍速くなる。
オーバーシュートAmaxや減衰率は減衰係数のみに依存する。つまり、ζ → 0とするとAmaxは大きくなり、ζ → 1とするとAmaxは0に近づく。
なお、ζ ≥ 1のときは、オーバーシュートを生じない。過制動という(後述)。
臨界制動 (ζ = 1)
ζ = 1のときの2次遅れ要素P(s)の極は、負の実数(重解) s = - ωnである。
このときのステップ応答のラプラス変換を求めると、
y(s) = P(s) 1/s = ...
したがって、
y(t) = K * { 1 - exp(-ωnt) * (ωnt + 1)} (t ≥ 0)
となる。
〇 過渡特性
・K > 0のとき、y' > 0 (0 < t < ∞)なので、単位ステップ応答は単調増加であり、ぎりぎり振動せずに、ぎりぎりオーバーシュートを生じずに、定常値y∞ = Kに収束する。
・固有角周波数ωnをN倍すると、反応がN倍速くなる。
過制動 (ζ > 1)
ζ < 1のとき、
ωd = ωn sqrt(1-ζ2)とすると、2次遅れ要素P(s)の極は、互いに異なる負の実数p1, p2である。
ただし、
p1 = - (ζ + sqrt(1-ζ2))ωn
p2 = - (ζ - sqrt(1-ζ2))ωn
である。
このとき、
s2 + 2 ζ ωn s + 2ωn2 = (s - p1)(s - p2)
ωn = p1p2
であるから、単位ステップ応答のラプラス変換は、
y(s) = P(s) 1/s = ...
と求まる。
したがって、
y(t) = K * { 1 + (1 / (p1 - p2)) * (p2 exp(p1t) - p1 exp(p2t)) } (t ≥ 0)
となる。
また、ζ >> 1のとき、|p1| >> |p2|なので、0 < exp(p1t) << exp(p2t) であり、p2が代表極である。
したがって、単位ステップ応答は、
y(t) ≃ K(1 - exp(p2t))
と近似できる。
これは、ほぼ1次遅れ系である。
〇 過渡特性
・K > 0のとき、y' > 0 (0 < t < ∞)なので、単位ステップ応答は単調増加であり、振動せずに定常値y∞ = Kに収束する。
・固有角周波数ωnをN倍すると、反応がN倍速くなる。
例 2次遅れ系(:マス・ばね・ダンパ系)の過渡特性と定常特性
ωn = sqrt( k/M )
ζ = c / ( 2 *sqrt( kM ))
K = 1 / k
M, c, kを変化させたときの振る舞いを見る。
〇 質量 M
固有角振動数ωn、減衰係数ζに含まれるので、速応性、安定度に寄与する。
定常値y∞には影響しない。
Mを大きくしたとき、
・ωn → 小:反応が遅くなる、
・ζ → 小:オーバーシュートが大きくなる。
i.e. 動かしにくく止めにくい。
〇 ダンパ係数 c
減衰係数ζのみに含まれる。
速応性にはほとんど関係しない。
定常値y∞には影響しない。
cを大きくした(:粘性を高めた)とき、
ζ → 大:オーバーシュートが小さくなる。
c ≥ 2 sqrt( kM ) (ζ ≥ 1)のとき、オーバーシュートが0になる。
i.e. ダンパは振動を抑える効果がある。
〇 ばね係数 k
固有角振動数ωn、減衰係数ζ、ゲインK含まれるので、速応性、安定度、定常値全てに寄与する。
kを大きく(:ばねを強く)したとき、
・ωn → 大:反応がはやくなる。
・ζ → 小:オーバーシュートが大きくなる。
・K → 小:定常値y∞は小さくなる。
i.e. ばねを強くすると、位置変位y(t)に対して、大きな力が加わるので、反応がはやくなる。一方で、行き過ぎてしまうので安定度は下がる。
ばねを強くすると、反力が大きくなるため、台車の移動距離が小さくなることを意味する。
(古典制御論 第4章)
周波数応答特性
入出力システムの伝達特性を調べる方法として、種々の周波数の正弦波を入力し、その出力応答を見ればよい。
これを周波数応答法という。
入力の変化速度が変わるにつれと出力応答がどう変わるかを統一的に調べることができる。
周波数応答法を適用することで得られる周波数応答特性を表す手法として、周波数伝達関数がある。
この関数の図式的表現法として、のボード線図、ベクトル軌跡、ゲイン位相線図がある。
開ループ系に直結フィードバックループをふかして閉ループ系にした場合の周波数応答特性を、開ループ系のベクトル軌跡やゲイン位相線図から、図式的に読み取る方法として、M-α軌跡とニコルス線図がある。
周波数応答と周波数伝達関数
入力として正弦波状信号を加え続けた場合、
出力が時間の経過とともに正弦波状の時間関数に落ち着くようなシステムにおいては、多くの異なる周波数の正弦波状入力に対する定常応答を測定し、入力信号と出力信号の間の振幅の比(= ゲイン)および位相差の2データを蓄積することでそのシステムの特性を知ることができる。
周波数を順次変えていった正弦波状入力に対する定常応答のことを周波数応答という。
子の周波数応答の測定によってシステムの測定をするのを周波数応答法という。
全てのシステムで周波数応答を測定できる出なく、プロパーな伝達関数 (伝達関数の分子多項式の次数が分母多項式の次数以下である関数)においては、周波数応答が測定できる。
周波数応答を知ることにより、伝達関数G(s)の虚軸上の値を知ることができる。
このG(jω)を周波数伝達関数(frequency transfer function)という。
なお、安定でないシステムでは、周波数応答を計測することができないものもある。
実部が正の極を持つ場合:正弦波入力に対する応答が発散する。
0の極を持つ場合:手錠出力が存在するが、その平均値が0でないことがある。
虚数の共役曲を持つ場合:いくつかの正弦波の和になる
周波数特性の表現法
ボード線図 Bode diagram
2つの曲線のグラフからなる。
・横軸に角周波数、縦軸にゲインを取ったゲイン曲線
・横軸に角周波数、縦軸に位相差を取った位相曲線
横軸は対数目盛log10(ω)でとる。
ゲイン曲線の縦軸はデシベル値(20 log10(Gjω) [dB])で表示する。
位相曲線の縦軸は度値(180/π φ(ω) [deg])で表示する。
デシベルについて、
入力が10倍になると出力は20増加する。
入力がk倍になると、出力は(k)dB増加する。
入力がk乗になると、出力はk倍になる。
( sqrt(2) )dB = 3くらい
( 2 )dB = 6くらい。
( sqrt(10) )dB = 10
( 10 )dB = 20
正確に描くには、多数のωについてG(jω)の値を正確に計算する必要があるが、概略であれば折れ線近似で描ける。
ω >> 1のとき、ω = 1のとき、ω << 1の3パターンを計算すればよい(ということ?)。
〇 一般的な1次遅れ要素、伝達関数がG(s) = K/(Ts + 1)のシステムのボード線図
G(jω) = K/(1 + jωT) = K/(1 + ω2T2) - j KωT/(1 + ω2T2)
であるので、
|G(jω)| = K / sqrt( 1 + ω2T2)
|G(jω)|dB = 20 log10(K / sqrt( 1 + ω2T2)) = 20 log10(K) - 20 log10(sqrt( 1 + ω2T2))
∠G(jω) = - tan-1(ωT)
s → Tsとしたときのボード線図は、元のボード線図を1/T倍したところに+ω方向に平行移動すれば得られる。 (1/(s+1)の話)
G(s)をK倍したときのボード線図は、元のボード線図を20 log10(K)だけ+ゲイン方向に平行移動すれば得られる。
→ このことから、特性が未知のシステムに対して周波数応答特性実験を行うことによって、そのシステムの角周波数ωにおけるゲインA(ω)と位相角φ(ω)を測定した結果と、特性が既知のシステムのボード線図を比較することで、そのシステムの伝達関数を推定することができる。
ゲインと磯区画の計算に際して便利な特性について:
G(s) = N(s) / D(s)のとき、分母と分子を極座標形式で
N(jω) = |N(jω)|exp(N(jω))
D(jω) = |D(jω)|exp(D(jω))
と書ける。これを用いると、
G(jω) = |N(jω)| / |D(jω)| exp(j * (∠N(jω) - ∠D(jω)) )
つまり、
ゲインA(ω) = |N(jω)| / |D(jω)|
位相差 φ(ω) = ∠N(jω) - ∠D(jω)
とできる。つまり、伝達関数の分母分子をそれぞれでゲインと変革を計算すれば全体のゲインはそれらの商、位相差はそれらの差で表せる。
〇 積分要素 G(s) = 1/sのボード線図
G(jω) = 1/ jω
|G(jω)| = 1/ω
φ(ω) = - ∠(jω) = - π/2 [rad]
|G(jω)|dB = - 20 log_10(ω) [dB]
φdeg(ω) = - 90 °
→ 角周波数ω が10倍になるとゲインは20 dB(i.e. |G|が1/10)減少する。
一般化する(1/s → K/sとする)と、1/sで得られたゲイン曲線を20 log10(K)だけ情報に平行移動させればそのボード線図が得られる。
〇 2次遅れ要素G(s) = 1/(s2 + 2ζs + 1)のボード線図
G(jω) = 1/ (1 - ω2 + j(2ζω) )
|G(jω)| = 1/ sqrt( (1 - ω2)2 + (2ζω)2 )
|G(jω)|dB = -20 log10 ( sqrt( (1 - ω2)2 + (2ζω)2 ))
φ(ω) = - ∠(1 - ω2 + j(2ζω) ) = - tan-1( 2ζω / (1 - ω2) ) [rad]
これらより、ω << 1のとき、
|G(jω)|dB ≅ 0, φdeg(ω) ≅ 0 °,
ω >> 1のとき
|G(jω)|dB ≅ - 40 log10(ω), φdeg(ω) ≅ -180 °,
ω = 1のとき
|G(jω)|dB ≅ - 20 log10(2ζ), φdeg(ω) ≅ -90 °,